「何もやってないのか。じゃあ俺も何もやってないだろ」
どうも、映画ファンの皆さん!
今日も今日とて映画について語りましょう。
上記セリフは映画冒頭、主人公我妻(北野たけし役)がホームレスに暴行を働いた中学生に対してセリフ。
主人公は目的のためなら手段を選ばない、とんでもないやつだとすぐにわかるシーン。
この時点で面白いだろうと予感させてくれる素晴らしい映画です!
今回はそんな映画『その男、凶暴につき』について感想レビューしていきます。
それでは!
北野武の記念すべき映画監督デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)は、
暴力描写の生々しさと、独特のユーモアが光る作品です。
この映画は、「北野映画」というジャンルを確立したと言っても過言ではありません。
この記事では、物語の詳細、キャスティング、そして注目のシーンについて深掘りしつつ、
笑いと哲学の交錯する魅力を解説します。
- ストーリーの詳細な流れとキャスティング
- 北野武映画の魅力と『ソナチネ』との違い
- 車で犯人を追いかけるシーンの絶妙な「間」
- 夜の街で白竜とすれ違うシーン
- 夜の街を引いた絵で撮るシーン
- ロッカールームでの犯人とのやり取り
- トリビアや小ネタ
- ラストシーンの意味や考察
- まとめ:暴力とユーモアの見事な融合
ストーリーの詳細な流れとキャスティング
物語の主人公は、暴力的で規律無視の警官、我妻諒介(北野武)。
その破天荒な行動と、犯罪者に対する容赦のない姿勢から、周囲に恐れられています。
ある日、我妻は薬物絡みの事件を追い始めますが、事件は意外な方向へと進展していきます。
キャスティング も非常に豪華。
北野武自身が演じる主人公の冷徹さを際立たせる一方で、白竜や岸部一徳といった名優たちが、独特の存在感を放っています。
それぞれのキャラクターが物語にリアリティを与え、北野映画ならではの世界観を構築しています。
北野武映画の魅力と『ソナチネ』との違い
『その男、凶暴につき』は、北野武監督の映画の中でも特に暴力描写が直接的。
『ソナチネ』のように虚無感や哲学的テーマが前面に出ることはなく、暴力が物語の核として描かれています。
また、コメディ要素がシリアスな展開に挿入される「間」の取り方も特徴的。
『ソナチネ』では「静けさ」が緊張感を生むのに対し、本作ではその静けさが突然の暴力で破壊されることで、観客に衝撃を与えます。
車で犯人を追いかけるシーンの絶妙な「間」
犯人を車で追い詰めるシーンは、映画の中でも特別な瞬間。
「車で轢いてしまったかもしれない…?」と思わせる微妙な間が一つまみのある意味、お笑いの間を創り上げています。
緊張の中に生まれる笑いは、観客の感情を揺さぶり、ただの暴力映画とは一線を画します。北野監督の天才的なセンスが光るシーンの一つです。
夜の街で白竜とすれ違うシーン
暗い夜の街を歩く中、白竜演じる犯人とすれ違うシーンは、観る者の注意を引きつけます。
一見、何事もなく通り過ぎるものの、少し経ってから気づき、我妻が突然走って戻る展開は、緊張感の中にも微妙なユーモアとリアルを感じさせます。
このシーンでは、キャラクターの直感的な動きが描かれており、北野映画のリアルな演出の一端を垣間見ることができます。
夜の街を引いた絵で撮るシーン
夜の街を俯瞰するように撮影されたカットで、我妻が突然通り魔のように背後から刺されそうになるシーンは、観客に不安感を与えます。
この「引いた視点」のカメラワークは、北野映画の特徴の一つ。
観客を客観的に状況を見せることで、緊張感と不意打ちの暴力性を強調しています。
この一瞬の映像美と恐怖の融合は見逃せません。
ロッカールームでの犯人とのやり取り
警察署のロッカールームで、我妻と犯人が静かに向き合うシーン。
この場面では、暴力的な緊張感が充満しつつも、妙に淡々とした空気感が漂っています。
また犯人にナイフを意識的に使用したくなるような、我妻の状況づくりは必見!
ものすごい心理的な駆け引きが静かに行われていきます。
北野映画特有の「間」の取り方が、暴力だけでなく心理的な駆け引きをも際立たせています。観客は何が起きるかわからない不安と緊張に飲み込まれるのです。
トリビアや小ネタ
• 監督デビューの経緯:当初、深作欣二が監督を務める予定でしたが、降板したことで
北野武が代わりに監督に。これが結果的に「北野映画」の始まりとなりました。
• タイトルの由来:英題は「Violent Cop」。直球すぎるタイトルが海外でも話題になりました。
• 暴力の描写:劇中の暴力シーンは、北野武が即興で考えたものが多く、脚本には書かれていない場面が多数あります。
ラストシーンの意味や考察
ラストシーンでは、あっという間に命が次々と散っていきます。
この結末は、「暴力の果てには何も残らない」というテーマを象徴しています。
そして新たな人物がその立場へ、変わりはいくらでもいる、世界は変わらない。
「暴力」はなくならないことも同時に表していると感じます。
観客によって解釈が分かれる部分も多いですが、この無機質な終わり方が映画全体のトーンと完璧にマッチしています。
まとめ:暴力とユーモアの見事な融合
『その男、凶暴につき』は、北野映画の出発点として今なお高く評価されています。
暴力的でありながらユーモラス、そして哲学的でもある本作は、何度観ても新しい発見があります。
• 北野武の監督としての才能を目撃できる作品
• 暴力描写とユーモアの絶妙なバランス
• 「北野映画とは何か」を体感できる一本
まだ観ていない方は、ぜひこの傑作に触れてみてください!
おわり